新川和江の「陸橋の上で」を読みました。
詩集『千度呼べば』(2013年新潮社・刊/2014年電子書籍版)掲載の1篇です。
この詩集には恋心を詠った詩が多く収められています。
年を重ね、日常にまぎれて生活していると、男性を愛しいと思う気持ちなどは、どこかへ置いてきてしまっています。
この年になっても恋多き女だと、家庭に色々と支障がでるわけですが(笑)
この詩集「千度呼べば」の詩をを読んでいると、恋する女心が、なんとけなげで愛くるしいことか。
比べて、今の私の心があまりにも枯れ果てているように思えてきます。
「陸橋の上で」の詩は、一日デートした後でしょうか、夜も更けて、それぞれの家へ帰らなくてはなくてはならないのに、離れがたくて、いつまでも陸橋の上に立っている二人の姿が描かれています。
そういえば、と、古い記憶を探っていると、若い頃に似たような思いをしたことがあったかもしれない。なんて、思ってみたりしました。
ほんの一時でも、あの頃の気持ちをなぞってみれば、少しは心に潤いが戻ってくるかもしませんね。
詩を読み進めていると、陸橋の上で感じた、お互いが引き寄せられるような気持ちは、詩人にとって今は懐かしい思い出に変わっているように感じます。
今はもう、陸橋の上にいた二人が、あの後どうしたのか思い出せないほど記憶は薄れてしまってはいるけれど、あの人と寄り添っていた頃、瑞々しい恋心をいだいていた心が愛おしい。そんな気持ちになる詩です。