くきはの余生

リタイアしてようやくのんびり暮らせるようになりました。目指すは心豊かな生活。還暦目前で患った病気のこと、日々の暮らしや趣味のことなどを綴っています。

コレガ人間ナノデス ~詩集『原爆小景』より・原民喜:やるせない思い、静かな怒り

 原民喜の詩集『原爆小景』より「コレガ人間ナノデス」を読みました。

青空文庫で読めます。→図書カード:原爆小景

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 原民喜は1905年広島生まれの小説家、詩人。

爆心地に近い実家で被爆。広島の被爆の状況を綴った「夏の花」を書き上げ、その後も被爆体験をもとにした作品を書き続けました。

1951年に東京西荻窪駅で自殺して亡くなりました。

 コレガ人間ナノデス

        原民喜 

 

コレガ人間ナノデス

原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ

肉体ガ恐ロシク膨脹シ

男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル

オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ

爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ

「助ケテ下サイ」

ト カ細イ 静カナ言葉

コレガ コレガ人間ナノデス

人間ノ顔ナノデス

 

原爆投下直後の 人間の姿。

激しい怒りでもなく、悲しみでもなく、感情が途絶えてしまったように、その姿を直視している詩人が想像できました。 

www.ebaragioba.info

コレガ人間ナノデス」カタカナで書かれている言葉は、ひらがなで書くよりも、詩人の心の奥底にある、やるせない思いや、静かな怒りをを強調するようだと感じます。

詩の内容については、説明は必要ないでしょう。

読むたびに、心が重たくなってしまうのですが、目をそらすべきではないのですね。

夢物語ではなく、現実に起こった事なのですから、キツくてもしっかり受け止めるべきなのだと思います。