桐壺の巻2回目。まだ冒頭の部分をのんびりと読んでいます。
前回は、身分社会の宮廷において、さほど身分が高くない更衣が、帝の寵愛を一身に受けていることで、後宮という職場でパワハラ、モラハラを受けている、とまあ、こんな状況でした。
今回は桐壺の更衣の家庭環境についてです。
父の大納言はなくなりて、母北の方なむ、いにしへの人の由あるにて、親うち具し、さしあたりて世のおぼえ花やかなる御かたがたにもいたう劣らず、なにごとの儀式をももてなし給ひけれど、とりたててはかばかしきうしろみしなければ、ことある時は、なほよりところなく心細げなり。
桐壺の更衣の父親は正三位の大納言でありましたけれど、すでに亡くなっていました。
当時の貴族の女性の身分は、後ろ盾となる親兄弟、夫の身分に左右されたので、頼りの綱であった父親が亡くなってしまったために心細い立場であったのです。
父上の大納言は亡くなりましたが、妻である母親は見識のある方で、身分の高い華やかな方々にも劣らぬように良くお世話していましたれど、頼もしい後ろ盾を持たない(桐壺の更衣は)何か事がある時にも御心細げな思いでいらっしゃいました。
亡くなったとはいえ、大納言という身分ですから、それほど低い身分のお姫様でもなさそうに感じるのですけれど、やはり、上には上がいるということなのでしょうね。
もっと身分の高い大臣のお嬢様方が多く入内しているので、どうしても侮られてしまうのでしょう。
帝も帝ですよ。女御、更衣は妻ではありますけれど、政治的な意味合いも強いわけですから、形だけでも身分に応じて対応すればいいものの、ままならないのが恋心なのでしょうか。
桐壺の更衣のことを考えるのなら、もう少しうまく立ち回ればいいのにと思ったりもしてしまいます。
平安時代の役職
平安時代の役職は、官位が正一位・従一位の太政大臣(だじょうだいじん)。役職の中では一番身分の高い立場です。
次に、正二位・従二位の左大臣、右大臣。ほぼ同列ではありますが、左大臣の方が少し立場が上でした。次に、正三位の大納言、従三位の中納言と続きます。
ここまで、官位が一位から三位までの人を上達目(かんだちめ)と言います。
続いて、正四位は参議、従四位は左大弁・右大弁、正五位は、左中弁・右中弁・左少弁・右少弁、従五位が、少納言です。
官位の従五位までが、殿上人(でんじょうびと)と呼ばれ、朝廷に参内できる身分の上級貴族になります。
平安時代の女性の呼び名
平安時代の女性は公に本名を呼ばれることはありませんでした。お話に出てくる更衣、桐壺更衣は、後宮の桐壺という区画に部屋を与えられていたために、そう呼ばれました。
源氏物語の作者、紫式部にしても、枕草子の清少納言にしても、夫や親の役職名をけた通称で呼ばれています。