昨年末あたりから、時折源氏物語の一節が頭に思い浮かぶようになりました。
「野分立ちて、にはかに肌寒きゆふぐれのころ、常よりも覚しいずること多くて、ゆげひの命婦といふを遣はす。夕月夜のをかしきほどに出で立てさせ給ひて、やがてながめおはします」
微妙に細かいところを間違えて覚えてはいるのですが、高校の古典文学の授業の宿題で暗記した源氏物語の一節です。
担当教師が「この部分は美しい文章だから覚えておきなさい」と、いくつか宿題に出したのを思い出しました。
45年も前に記憶したものを、今になって思いだして、まだ諳んじられたというのは、我ながら驚きましたが、それだけ印象的だったのだと思います。
源氏物語は抜粋でいくつかの有名な抄は学びました。瀬戸内寂聴さんの現代語訳でも読みましたし、大和和紀さんのマンガ『あさひゆめみし』も読みました。テレビドラマになったのも観た記憶がありますので、ストーリー自体はおおまかに知ってはいますけれど、源氏物語54帖を通して読んだことはありません。
日本文学の分類では「中古文学」と言いますが、平安時代の女房文学は好きです。でも、いずれも断片的にしか読んだことがありません。
源氏物語は、生涯のうちに一度は読んでおきたい文学作品ではあるけれど、なかなか読めない本の1冊ではないかと思うのです。
かつて暗唱した記憶が今になって頻繁によみがえってくるのは、なんだか「読みなさい」という啓示なのではないか、なんて考えました。
古事記を読み終えるのに3年かかりましたから、休み休み10年くらいかければ、もしかしたら読み終えられるかもしれないと思います。
幸い電子書籍で『源氏物語 現代語訳付き 全10巻合本版』玉上琢也・著を見つけました。54帖すべてが原文と解説、現代語訳で載っています。
ちょうど60歳の節目の年でもあります。学ぶためではなくて、単に物語を楽しむために、のんびり原文を読んでみるのも老後の楽しみとして面白いかなと思います。