長田弘の「カレーのつくりかた」を読みました。
『長田弘詩集』(ハルキ文庫)に掲載されている一篇です。初出は1987年刊の詩集『食卓一期一会』(晶文社)
長田氏の詩には食べ物の作り方を詠った詩がたくさんあって、いつも食事を作っている主婦としては読むのがとても楽しいのです。
「カレーのつくりかた」のカレーは、スパイスを炒ってからすりつぶしてカレー粉を作るというかなり本格的なカレーです。
詩人の手にかかると、カレーを作る手順でさえが楽しい詩になってしまうのですね。
でも、ただ作り方を示しているだけではありません。料理を作ることを通して人間の「知恵」に思いを巡らせているのです。詩人は「掟じゃなくて味は知恵だ」と言っています。
確かに、料理にはこうしなければいけないという決まりはありません。より美味しくするためにはどうしたらいいか、という作り手の工夫が味を良くしてきたのですね。
そして最後には「きみを椅子からとびあがらせる とびきりのカレーをつくってあげるよ」と言っています。
そうなんですよね。料理にはいつも食べさせたいと思う相手がいるのです。
もちろん、自分のために作る場合もあるかもしれませんが、私なら自分のためだけの食事には、スバイスのブレンドからはじめるなんて手をかけないでしょう。
自分以外の大切な人のために作るからこそ、面倒な作業も楽しいものになるのです。