佐藤惣之助の「めぐりあひ」を読みました。詩集『季節の馬車』の中の一篇です。
青空文庫で読めます→図書カード:季節の馬車
佐藤惣之助は、1890年神奈川県生まれの詩人、作詞家です。
処女詩集『正義の兜』(1916年)をはじめ、『狂へる歌』『満月の川』など複数の詩集、句集、散文集などを出版しています。
また、『赤城の子守唄』『人生の並木路』『人生劇場』『大阪タイガースの歌』(六甲颪)など多くの歌謡曲の歌詞も世に出しています。
めぐりあひ
佐藤惣之助
ふかい年月のあひだ僕のこころに
るゐるゐとしてかくれてゐた美しいものが
今こんなにも明るい地球の春の朝紅あさやけとなつて
寶玉をふくんだともし火のやうに
かくかくと僕の眼にうかんで來たのか
それは逢ふべくして逢へなかつた
心の城の姉妹のやうに
このきよらかな朝の境界線にたつて
ふたたびめぐりあひし喜び!
あらあらしかつた僕は今さらに
その尊い姉妹を尊敬しようとおもふ。
最初、何の知識もないままに読んで、誰か大切な人と出会ったことの喜びを詠った詩かと思いました。
「逢ふべくして逢へなかつた 心の城の姉妹」が何なのかわからなくて、何に巡り会ったことがこれほどの喜びにつながっているのか、想像が及びませんでした。
実は、今でも良くわかってはいませんが、きっと詩人にとってとても大切な人、愛しい人に巡り会ったに違いないと感じました。
めぐりあったことによって、詩人の世界が、それまでよりも明るく美しいものに変わったのです。
「であい」も「めぐりあい」も美しい言葉ですが、「めぐりあい」はより強く、求めて、求めて、求め続けていたものに、やっと会えたというイメージがあります。
佐藤惣之助氏は1911年(明治44年)に従妹である川田花枝さんと結婚していますので、もしかすると、「尊い姉妹」は、奥様のことだったかもしれません。
(川田花枝さんは1933年(昭和8年)に亡くなって、その後、萩原朔太郎の妹、萩原愛子さんと再婚しています)
めぐりあった人が、誰だったとしても、詩からはのその人を慈しむ気持ちがあふれているように感じます。