八木重吉の「人を 殺さば」を読みました。詩集『秋の瞳』に掲載されている一篇です。
青空文庫で読めます。→図書カード:秋の瞳
八木重吉(1898年~1827年)は、東京生まれの、日本の詩人。東京高等師範学校を卒業して英語の教師のかたわらで詩作をしました。詩集『秋の瞳』『貧しき使徒』
人を 殺さば
八木重吉
ぐさり! と
やつて みたし
人を ころさば
こころよからん
この詩をとりあげるかどうか、実は迷いました。
短い詩ですが、あまりにもインパクトが強いので、誤解を招きそうだと思いました。
それでも、詩集『秋の瞳』を読んでいて、私が一番心を動かされた詩が、これだったので、「詩を読む」100編目にご紹介する詩として、あえてこれを選びました。
八木重吉の詩は、強い主張がある場合でも、比較的やわらかい、やさしい感じの言葉で綴られています。
そんななかにあって、この詩は、ひらがなで優しい感じではあるものの、詩人のその時の感情を、直線的に表現しているように感じられました。
本当に行動に起こそうとしたわけではありません。でも、そういう気分になることはあります。
「ああ、あの時の私のことだ」と、思い当たって、共感してしまったのです。
他人を亡き者にしようとは考えませんでしたが、自分を消してしまいたい、と、思い詰めた時がありました。人間、長く生きていれば、色々あるものです。
実行してしまったら、犯罪者ですから、快いはずはありませんけれど、それほど追い詰められて、身動きできなくなった時、心の奥底で考えてみたりすることは、あると思います。
そして、考えることで、現実に返り、また苦しみや悩みに向き合えるのだと思います。
人間の心というのは、複雑ですね。