野口雨情の「證城寺の狸囃」(しょじょじのたぬきばやし)を読みました。
詩というよりは、コミカルで楽しい童謡でお馴染みですね。青空文庫で読めます。→図書カード:未刊童謡
野口雨情は1882年(明治15年)生まれの詩人、童謡作詞家。佐藤佐次郎の雑誌「金の船」に童謡を発表、また全国を旅してその地の民謡も作詞しました。「赤い靴」「七つの子」「シャボン玉」「青い目の人形」など、今も親しまれている童謡をたくさん書いていて、北原白秋、西条八十とともに三大童謡詩人と言われています。
證城寺の狸囃
野口雨情・詩 中山晋平・曲
證、證、證城寺
證城寺の庭は
ツ、ツ、月夜だ
皆出て来い来い来い
己等(おいら)の友達ャ
ぽんぽこぽんのぽん
負けるな負けるな
和尚さんに負けるな
来い 来い 来い来い来い来い
皆(みんな)出て 来い来い来い
證、證、證城寺の萩は
ツ、ツ、月夜に花盛り
己等(おいら)の友達ャ(※)
ぽんぽこぽんのぽん
※己等(おいら)は浮かれて
證城寺は、千葉県木更津市にある「證誠寺」のことです。雨情が木更津を訪問した時に、證誠寺に伝わる狸伝説を耳にして書いたもの。1924年(大正13年)に児童雑誌「金の星」に発表されて、その後、作曲家の中山晋平が曲をつけました。
證誠寺の狸伝説は、群馬県館林の「分福茶釜」、愛媛県松山市の「八百八狸物語」と合わせて三大狸伝説と呼ばれています。陽気な歌詞とは少し違って、伝説は少し哀れなストーリーなのですね。證誠寺の狸伝説についてはこちら→證誠寺のたぬき。
歌はYouYubeの動画でどうぞ。
あまりにも有名なので、今更説明するまでもない詩です。
タイトルが「狸囃子」なので当然わかるわけですが、詩の中には一度も「狸」という言葉が出てこないのです。語り手は「おいら」で、おいらは狸。狸の側から書いた詩なのですね。
もしかすると、哀れな最期を迎えてしまう狸の親玉がおいらなのかもしれないと、想像しましました。でも、哀れではありますけれど、陽気に歌って踊って楽しく過ごせたのは狸冥利に尽きる気もします。
青空文庫の詩では、歌詞の最後のところ
「證、證、證城寺の萩は ツ、ツ、月夜に花盛り
己等(おいら)の友達ャ(※)ぽんぽこぽんのぽん」なのですが、
実際に歌われている歌詞は「己等(おいら)は浮かれてぽんぽこぽんのぽん」になっています。曲をつけるときに変えたのでしょうか、よくわかりませんでした。
英語バージョンもなかなか楽しいです。歌詞はかなりの意訳ですし、外国の方にとっては中国風も日本風もも同じようなイメージなのかなという感じですが、
最近は狸などの野生動物は身近に見られなくなりましたが、昔はもっと民家の近くにいて身近な存在だったのでしょうね。
私の住んでいる地域は田舎ですので、20年くらい前までは「たき火をしていると狸が火にあたりに来た」なんて話もありました。野ウサギがいたり、キジの親子が草陰に隠れていたりしたものでしたけれど、今は見かけなくなりました。少し寂しい気もします。