くきはの余生

リタイアしてようやくのんびり暮らせるようになりました。目指すは心豊かな生活。還暦目前で患った病気のこと、日々の暮らしや趣味のことなどを綴っています。

『古典がおいしい平安時代のスイーツ』を読んだ感想

『古典がおいしい平安時代のスイーツ』前川佳代・宍戸香美・著(かもがわ出版)を読みました。

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この本は、料理レシピ本であり、平安時代の食文化、文学を学べる絵本でもあります。

活字も大きいので、視力が弱い私でも、じゅうぶんに読むことができました。

何年か前に、平安時代の甘味料「あまずら」を再現したというニュースを見たことがあって、どのようにして作るのか、とても興味を持ったことがありました。

ネットの話題でこの本の出版を知った時、これは、あの時の「あまずら」の方達ではないかと予想して、早速注文してみたものです。

この本はやはり、前述の研究をされていた、奈良女子大学の大和紀伊半島学研究所古代学・聖地学研究センター協力研究員という肩書きのお二人でした。

「あまずら」とは、正式には「甘葛煎(あまずらせん)」と言うらしいですが、植物のツタの樹液を集めて、長時間煮詰めたものだそうです。

本の中でも写真付きで解説されていて、古代の貴族たちが、このような甘味を口にしていたのかと思うと、ファンタジー心がうずきます。

でも、一般の庶民は一生、口にできなかった貴重な食べ物だったはずです。

本の中では、枕草子や源氏物語などの物語に出てくる、十種類の平安時代の甘味が紹介されています。

小麦粉、米粉、もち粉など現代でも手に入る材料でレシピが作られていて、調理方法も、茹でたり、揚げたりシンプルなので、意外に手軽に作れそうです。

私が作ってみたのは、枕草子に出てくるという「ほうとう」

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小麦を捏ねて形作り茹でたもの。

現代の「ほうとう」は甘味ではなくて、平らなうどんのような食べ物ですが、そのルーツに当たるのではないかと推測しました。

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そういえば、コロナ禍がはじまった頃、巣ごもりのなかで、古代のチーズ「蘇(そ)」が、SNS等で話題になっていた時期がありました。

蘇は牛の乳を時間をかけて煮詰めた食べ物ですが、この頃の食べ物は「時間をかける」ことで完成するものが多いですね。

ガスも電気もない時代ですから当然ではあるのですが、時間をかけ、手をかけておいしいものを作り、また、誰かに食べてもらう生活というのは、なんだか良い生活だなと思います。