小川未明の「私は姉さん思い出す」を読みました。
青空文庫で公開されている一篇です。→青空文庫 図書カードno.51120
定本小川未明童話全集3(講談社)に収録されています。
小川未明は1882年(明治15年)生まれ。日本のアンデルセンとも称されている児童文学作家です。童話「赤い蝋燭と人魚」が有名です。
私は姉さんを思い出す
小川未明
花によう似た姿をば、
なんの花かと問われると
すぐには返答に困るけど。
ただ微笑みてものいわず、
うす青白き夢の世に、
いまは幻と浮かぶかな。
花にいろいろあるけれど、
燃える紅い花でない。
冷たい白い花でない。
夏まだ浅く、色淡く、
紫陽花の咲く頃に、
私は姉さんを思い出す。
定本小川未明童話全集3では少年詩という括りになっているそうですが、童謡として歌うために作られたようなリズムのある綺麗な詩です。
この詩が書かれた状況や背景についてはわかりませんが、年の離れた姉さんを花にたとえて、少年の仄かなあこがれや、懐かしい気持ちが込められています。
単に小さな子供が無邪気に姉を慕っているのではなくて、少し大人になりかけた時期の少年の心を表現しているように感じるのです。
少し寂しい雰囲気で、「うす青白き夢の世に、いまは幻と浮かぶ」とか、「紫陽花の咲く頃に、私は姉さんを思い出す」などの言葉から、姉さんは今は一緒に暮らしてはいないのだろうと想像しました。
嫁いでしまったのか、それとも、亡くなってしまったのか?
私にはなんとなく、亡くなってしまったように思われたのですが、どうなのでしょうか、わかりません。