阿部智里・著『合本八咫烏シリーズ 第一部』(文春e-book)の4冊目から6冊目まで読み終わりました。
4冊目『空棺の烏』5冊目『玉依姫』6冊目『弥栄の烏』。これで本編の第一部が完結値だそうです。
今は外伝が何話か発表されていますが、それはまだ読んでいません。
読み始めた時には、山内という地を舞台にした八咫烏一族の物語だと思いこんでいたのですが、読み進めているうちに、八咫烏だけでなく他の種族もいて、作者が創造した世界はもっと広いぞと驚きを持って読みました。
空棺の烏
宗家を守護する山内衆の訓練所、勁草院に入所した雪哉は仲間達とともに厳しい訓練を続けます。一方で、若宮には皇位継承ができないという問題が浮上して、その原因を探すのでした。
雪哉たちの勁草院での訓練や生活の様子は、若々しいエネルギーに満ちていて読んでいて楽しかったです。ちょうど男子寮の高校生生活のような雰囲気で青春だなぁという感じでした。
若宮が皇位継承の儀式ができないという問題の原因を探す中で、宗家の隠されてきた秘密が明らかになってきます。
若宮には次から次へと難題が降りかかってきたり、反対派の陰謀に振り回されたりと、スンナリと金烏としての地位が定まらない運命のようです。
物語のメインキャストなので仕方がありませんけれど、一族の頂点に立つというのは、華やかな裏側で始終困難と闘わなくてはならないものなのだなと 、少々気の毒に思うほどです。
玉依姫
5冊目のこの巻は、これまでの物語とはかなり傾向が違っているので、最初少し戸惑いました。まるで別のお話を読んでいるのかと思うほど。
主人公は志帆。なんと、現代の日本で暮らす普通の女子高生でしたので、どんな風に八咫烏の世界と結びつけるのだろうと思っていたら、なるほど、こう来たか(笑)
山内の神「山神」と、八咫烏一族、大猿一族、そして人間の因縁が描かれ、前作に出て来た「空棺」の秘密が解き明かされます。
民俗学的に言うと何とかあるのかもしれませんが、知識不足でうまく表現できませんけれど、「山神」の表現がとても面白く感じました。
八百万いる日本の神様は、常に正しく公正である聖なる神だけでなく、もっとワガママで泥臭く、汚い魂もあって、清濁併せ持っているものなのだなと感じました。
oba.hatenablog.com
弥栄の烏
5冊目の玉依姫では、人間の志帆の目を通しての物語でしたが、6冊目『弥栄の烏』では、同じテーマを八咫烏一族の立場から描いています。ちょうど1冊目と2冊目も視点を変えての物語でしたが、それと同じような感じでしょうか。
視点が違えば物語内で起こる出来事もまったく違った意味を持つようになりますので、表裏を読んでいくというのが面白いと思いました。
この6冊を持って、シリーズ第一部完結とのことですので、物語の最後はきちんと結ばれています。が、例のごとく、面白くて早く先のお話が読みたくてどんどん読み進めてしまいましたので、読み落としたことも多くあるかもしれません。
しばらくして落ち着いた頃に、再読すれば、また違って感じられるかもしれませんね。