北原白秋訳の「まさあぐうすハートのクイン」を読みました、。
青空文庫で読めます。→図書カード:まざあ・ぐうす
マザーグース(Mother Goose)は、イギリスの伝承童謡で、子守歌や物語、ナンセンスな歌など古くから人々に親しまれ歌い継がれてきた童謡の総称です。
ハアトのクイン
作者不詳 北原白秋・訳
ハアトのクインが饅頭(タアト)をつくられた。
みんなできたよ 夏の日いっぱいかァかった。
ハアトの兵士(ネイプ)が饅頭(タアト)をぬゥすんだ。
こいつしめたとそっくりもってにげてった。
ハアトのキングが饅頭(タアト)とおっしゃった。
そりゃこそたいへん、兵士(ネイプ)を御折檻(ごせっかん)なさった。
ハアトの兵士(ネイプ)が饅頭(タアト)をかえした。
まっぴら閉口してもういたしません。
日本で言えば、わらべうたのように昔から歌い継がれてきた歌で、詩として読んで意味が通るものもあれば、はやしことばのように意味を成さない詩もあります。
ハアトのクインの詩は、ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』の中にでてくる裁判で、白ウサギがハートのジャックの罪状を読み上げる場面で出て来ます。
この詩は1762年に「ヨーロビアン・マガジン」という雑誌に掲載された詩の冒頭部分でした。4連から成る詩で、原詩では、さらに、スペード、クラブ、ダイヤとお話が続いているそうです。
もともとはマザーグースに含まれていた詩ではなくて、『不思議の国のアリス』が評判になり有名になったため、後にマザーグースのひとつに加えられるようになりました。
北原白秋の訳で面白かったのは、焼菓子のタルトを「饅頭」と書いてタアトと読ませている点。明治時代にはまだ洋菓子は一般的でなかったためなのでしょう。
この時代の子供が、この詩を読んだら、異国の饅頭とはどんな味がするのか食べてみたいと憧れたかもしれませんね。