香月日輪・著 『僕とおじいちゃんと魔法の塔』【6冊合本版】(角川書店)を、電子ブックで読みました。再読です。
電子ブックはデータなので、「合本版」と称してシリーズ全巻がまとめて購入できるのです。場所もとらないので、最近は大人買いして一気に読むのが気に入っています。
私は『妖怪アパートの幽雅な生活』をはじめ、香月日輪さんの書く少年向けのファンタジーが好きで、何度も読み返しています。
香月さんは亡くなってしまったため、『僕とおじいちゃんと魔法の塔』は6巻で終わってしまいましたが、生前は7巻目の構想も練っておられたとか。
ストーリーは1巻ごとにお話が決着するので、物語としての違和感はあまりありませんが、続きのお話が読めないというのは何とも残念なことです。
毎日少しずつだったので、読み終わるのに2ヶ月くらいかかってしまいましたが、とても楽しい時間でした。
家庭の中で違和感を感じ続けていた 主人公の龍神(たつみ)は、不思議な塔を発見します。実はその塔は亡くなった祖父のもので、塔には幽霊となった祖父が青年の姿で住んでいたのでした。
物語の最初では中学生だった龍神は、両親の猛反対を押し切って、魔法の塔で暮らしはじめます。
香月日輪さんの小説には、必ず主人公を導く大人が登場します。 主人公や仲間が困難に直面したとき、頭ごなしに叱ったり命令したりするのではなく、じっくり話を聞き、経験談を語り、アドバイスし、諭し、信じて見守る大人。そんな大人に支えられて、問題を解決して成長して行く子供のお話です。
同時に、そういう大人達とは正反対の大人や子供も登場して、世の中の理不尽さや人間の負の部分を見せつけ、反面教師としての役割を担っていることもあります。
香月日輪さんの文章には、お説教臭いなと感じる部分もあるので、拒否反応を感じる人もいるかもしれません。でも、主人公達の行動を追体験することで、読者も一緒に考えることができると思います。
幽霊や、魔女や魔物が出てくるお話ではありますが、ファンタジーなのでいつでも希望に満ちています。異質な者との関わりも、主人公の成長には欠かせない存在なのです。
最近の私はは、体調の関係なのか、感動的でも重い内容の小説や、悲劇や、冒頭に殺人事件のあるミステリー小説などは好まない傾向にあるため、ほど良く軽くて、楽しいお話が好きになってきています。