くきはの余生

リタイアしてようやくのんびり暮らせるようになりました。目指すは心豊かな生活。還暦目前で患った病気のこと、日々の暮らしや趣味のことなどを綴っています。

淺葉なつ作『神様の御用人』を読んだ感想

小説『神様の御用人淺葉なつ・著(メディアワークス文庫)を電子ブックで読みました。

ジャンルとしてはライトノベルになるのでしょうか。ライトノベルの中には、「今どき」すぎておばさんには読みにくい作品もあるのですが、読み応えのあるお気に入りもいくつかあって、この小説もその中の1つです。

f:id:kukiha-na:20161127181309p:plain

 淺葉なつは、第17回電撃小説大賞で目ディアワークス文庫賞を受賞。『空をサカナが泳ぐ頃』でデビューしました。『神様の御用人』はシリーズ化して現在6巻まで出ています。

 西洋を舞台にしたファンタジーに出てくるのは、ドラゴンやモンスターやゴーストを思い浮かべますが、日本を舞台にしたファンタジーだと、妖怪や幽霊、あやかし、そして、八百万の神々なんですね。

若い人達が読むライトノベルにも、昔ながらの妖怪やあやかしなどをテーマにした物語がたくさん書かれているのに、実は少し驚きました。

それも、かなり自由な発想で、当の妖怪や幽霊が聞いたら驚くんじゃないかと思うような描かれ方をして驚いたり、感心したりします。

この『神様の御用人』シリーズもそうなのです。私たちは神社に参拝する時に、当然のごとく神様に願い事をするわけですが、「神様の願い事は誰が聞くのか」を考えたことがあったでしょうか? 

御用人とは、神様の願いを叶えるために奔走するお役目なのです。なるほど、「こういう発想はなかったわ」と思った私です。

実業団野球チームに入った良彦は怪我のため激しい運動ができない体になり退職を決断します。入社早々に社会人生活からリタイアしてしまい、頑なになった心がほぐれないまま実家でバイト生活中でした。

そんなときに降ってわいたのが、神様の願いを叶えるという御用人のお役目だったのです。

最初の御用を言いつかったのは「方位神」で、狐の姿のこの神様が、良彦の相棒として案内役を務めることになります。方位神は、神道の神さまではなくて陰陽道の神様なんですけれどね。

この小説では神様のキャラクター設定がとても面白い。たとえば方位神は、甘い物好きで好奇心旺盛なもふもふ狐ですし、現代に馴染んでバソコンを使いこなす神様さえもいたりします。

かといって知識がないままに想像で書いているのではなくて、作者はかなり深いところまで調査して勉強して、実際に神社を訪ねたりもして書いているらしく、史実に沿って語られています。

そういう意味では、神道について、神社について興味を持つようになりました。

実は、だいぶ前から『古事記』の現代語訳を読んでいるのですけれど、最初の國産みのところで、漢字だらけの神名が延々と続くのに恐れをなして挫折していたところでした。

この小説のように出てくる神様がキャラクター化していれば、親しみを感じられるかもしれませんね。