水谷まさるの「五つの色」を読みました。
童謡集『歌時計』(1929年行人社)掲載の一篇です。
青空文庫で読みました、→図書カード:歌時計 底本は『叢書の本の童謡「歌時計」童謡集』(1996年大空社)です。
水谷まさるは、1894年(明治27年)生まれの童話作家、童謡詩人です。
早稲田大学卒業後、コドモ社の「良友」編集者を経て「少女画報」を主宰。同人誌「童話文学」を創刊しました。童謡「あがり目、さがり目」の作詞者として知られています。1950年(昭和25年)に亡くなっています。
五つの色
水谷まさる
今朝のお膳は
きれいだな
五つの色が
ならんでる
赤い梅干し
黒い海苔
焼いた玉子は
まつ黄色
御飯は白く
味噌汁に
浮いて青いは
ほうれんさう
おとぎばなしの
王さまが
召し上がるよな
朝御飯
ぼくはすつかり
よろこんで
五つの色に
見とれたよ
彩り鮮やかな朝ごはんのおいしさ、嬉しさを詠った詩です。食育の詩と言ってもいいかもしれません。
赤、黒、白、黄、青の五色の食材は、栄養バランスの良い食事を示しています。目から入る彩りの美しさは食欲を刺激しておいしい朝ごはんがいただけます。
卵焼きや海苔、梅干しなど庶民が食べる献立ですが、お母さんが作ってくれた暖かいご飯は、王さまが食べるような特別のご飯に感じられるのです。
こうして毎朝、母親心づくしの朝食を食べて育った子は、心身共に健康に育つことは間違いありません。
近年はみんな忙しくて、慌ただしくて、食事を疎かにする傾向があります。朝食を食べないで通学する子。インスタント食品やコンビニで買ったものばかりが食卓に並ぶ家庭。好き嫌いが多くて好きな物ばかり食べている子。家族みんなが食卓に向かうことがなくいつも子供1人だけで食事をする家庭。
その結果、栄養バランスが崩れて肥満傾向だったり、栄養が不足したり、心がすさんで落ち着かなかったり、問題も増えているようです。
バランス良く、そして楽しく食べることは心身を健康に保つための基本です。
この詩のように、みんな朝ご飯を喜んで食べて育つ子であって欲しいですね。
私なども、毎日毎日食事を作っていると、どうしても楽な方に流れてしまいがちなのですが、家族の健康を担っていることを忘れてはいけないと自戒しました。