童謡詩人、金子みすゞの「七夕の頃」を読みました。
『金子みすゞ童話全集』収録の一篇です。
金子みすゞと言えば、東北の大震災後、テレビCMが自粛されていた時期、ACのCMで盛んに流れて注目されましたね。
私もあの時、改めて詩集を読み直して癒やされたひとりです。
七夕のころ
金子みすゞ
風が吹き吹き笹藪の
笹のささやきききました。伸びても伸びてもまだ遠い、
夜の星ぞら、天の川、
いつになつたら、届かうか。
風がふきふき大海の
波のなげきをききました。もう七夕もすんだのか、
お空の川もうすれるか。
さつき通つた旅びとは、
五色のきれいな短冊の
さめてさみしい、笹の枝
この詩は音読して味わいたい詩です。音の重なりが心地よく響きます。
笹のささやき、なげきをききました、さめてさびしい笹
日本語って美しいな、優しいなと実感します。
3節に分かれている詩は、最初に手が届きそうも無い遠い空を詠み、次に、大海原、最後に旅人を歌っています。つまり、天(夜空)と海(大海)と地(旅人)と、この地球にあるものすべてに目を注いでいるように感じます。
そして、どの節にも風が吹いて、空と海と地上を繋いでいるのです。風はもしかしたら「空気」かなと想像しました。
牽牛織女の七夕自体を表現した詩ではありませんが、少し寂しくて、天の川が美しい七夕の頃の夜の風景が目に浮かびます。