土田耕平の「芝の芽」を読みました。
青空文庫で読めます。 →図書カード:芝の芽 底本は日本児童文学大系第九巻(1977年ぽるぷ出版)です。
土田耕平は、1895年(明治28年)生まれの歌人。童話作家。1911年に嶋木赤彦に師事して歌詩「アララギ」に投稿。編集にもかかわっていました。
1921年頃病気のため伊豆で療養生活をおくっています。その後は故郷の長野へ帰り、県内を転々としながら、信濃毎日新聞の歌壇選者を務め、短歌、童話の創作活動をしました。1940年に心臓病で亡くなっています。
芝の芽
土田耕平
芝の芽の萌えるころは
ふるさとの丘を思ひだす
ゆるやかにふわふわと雲り浮かんだ
あの丘山を
犬ころが走り
凧があがり
ぼくらは寝そべつてゐたっけが
「どこへ行かうかな」
「大きくなつたら」
「海へ__空へ__遠いところへ__」
誰やかれやみんな叫びあつた__
芝の芽の萌えるころは
ふるさとの丘を思ひだす
ゆるやかにふわふわと雲の浮かんだ
あの丘山を
ああ誰もかれも
みんな大きくなつただらうな
冬の間茶色く縮こまっていた芝の芽が芽吹くのは春、4月ころからです。暖かい日差しを浴びて、子供たちはふんわり白い曇り浮かぶ丘山に集い、思い思いに遊んでいるのです。
それが大人になった詩人の原風景、子供の頃のふるさとでの楽しい想い出なのですね。当時は世の中のことは何も知らなくて、将来は希望に満ちていました。
社会に出て色々な経験を積んでから、あの頃のことを考えると、どこまでも、ひたすらに走って行けそうに感じていた、あの頃の自分が愛おしい。
そして、そう考えている自分と同じように、あの頃一緒に将来を考えた子供たちも、みんな大人になっているのでしょう。どんな大人になっているのかな、なつかい気持ちでいっぱいになります。